隣に座っていいですか?

子供の妄想だろう。
実の母親が恋しくて
つい
そんな妄想を描く

ありがちである。

田辺さんにそれを言うと

「あ。桜には亡くなった妻が見えるようです」
こちらも平然と言う。

いやぁーーー!
怖すぎるーー!

「たまにらしいですけどね。最近見えなかったから、もう見えなくなったのかなーとか思ってましたが。そうですかー」

普通に言わないでよ。

味が濃くなった煮付けを『美味しそう』って、テーブルに運んでくれる彼の後姿を目で追いボーっとしていると

「『よろしくお願いします』って言ってたんだ」
クルリと振り返り
私に笑顔を見せるので一瞬ドキリ。

彼の笑顔は魅力的。

「……はい」
返事をすると

「さくらー」って今度は桜ちゃんに声をかける。

桜ちゃんは絵本を見ながら「なぁに」と顔を上げずに彼に言う。

「今日お母さん来たの?」

「うん」

「久し振りだね。元気だった?」

「うん。元気」

何だ?
その会話。

「どんなお話した?」

「えっとね……えっと、えーと……」
絵本と閉じて
桜ちゃんは私の姿を探す。

「さくらにじゃなくて、いくちゃんママに『よろしくおねがいします』っていってたよ」

「そうか。どんな顔で?」

「うーん、ニコニコだよ。うれしそうだったよ」

「そうか」
彼は納得して私の傍に寄り

「亡くなった妻も郁美さんを認めてるんですね」
嬉しそうに耳元で言う。
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