隣に座っていいですか?


のんびりと
月日は流れ

あっという間に
桜ちゃんの発表会。

今日の発表会には
田辺さんのご両親と亡くなった奥様のご両親も見に来て、ご挨拶する予定。

朝からお腹痛い。

「……行きたくない」
心の声が出たのは
私じゃなくて彼だった。

ある意味
私よりへタレがいるので
強くなれてる気がする

いや
強くならねばならない!

私の予想では
幼稚園の会場前で待ち合わせし
皆で微笑ましく
桜ちゃんの晴れ姿を見るものだと思っていたならば

全然違った。

各自勝手に見て
終わったら
会場の前で挨拶して終わり。


えぇ?
それは違うでしょう。

中古で友達から買った
いつの時代の?と、いうくらい古いビデオカメラを彼は手にして、2人並んで開演を待つ。

「一緒に観ましょうよ」

「いいんです」

「だって……」

「僕は親に反抗して家を出た人間だし、亡くなった妻の両親は僕を恨んでるから」

そう言われたら
返事に困る。

「それでも変ですよね。みんな桜が可愛いから集まってしまう」
いつもの笑顔で誤魔化された。

スッキリしないまま
開演のベルがなり
全園児のハーモニカ演奏が始まる。

彼と私は
目を皿にし
世界で一番可愛い娘を探していた。
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