隣に座っていいですか?

ぼんやりと目を覚ましたのは
彼の電話でのやりとりだった。

「はい。わかりました。お世話になります……」

お仕事かな?

気配に気付いたのか
立ち上がっている体勢から私を見下ろし、会話をしながら私の頭を撫でる。

今、何時だろう
クシャミがひとつ出る

って
全裸で寝てたし

彼は上半身裸だけど
下はパジャマ着ているし

ズルい。

モゾモゾと毛布を引っ張り
みのむし状態になっていると、彼は電話を切りベッドに腰掛けた。

「あちらのお手伝いさんで」

あちらのお手伝いさん?

「桜は『昼ご飯を食べてから、こちらへ送ります』と、言ってました」

あぁ
はいはい。

「『ご主人様も奥様も、楽しそうで久し振りに笑い声が響いてました』ですと」

それはよかった。
可愛い孫の存在は大きいよね。
私も嬉しいとうなずいていると、彼はまた立ち上がり、どこからか小さな箱を持って来た。

ベルベッドの紺色の箱。
手のひらにのるような
小さな箱。

彼は静かにそれを開け
私に「左手を貸して下さい」そう言い、私が手を出すと箱の中から指輪を取り出し薬指にそっとはめる。

指輪?

「……私に?」

「小さいけど」

シルバーの指輪に小さなダイヤが輝いている。

「ありがとう」

思ってもいなかったから
驚いてしまい

こんな
当たり前の言葉しか出ない。
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