隣に座っていいですか?
しかたない
ボランティアだ

ひとつひとつプリントを手に取り、田辺さんと確認しながら終わらせる。

延長保育の申し込みに判子を押し
用意するものを私が読み上げ
田辺さんが段ボールを開いて、前の幼稚園で使用していたスモックなどをチェック。

買うものをメモに書き

やっと一息。

氷の溶けたカルピスを喉に流し、ふと部屋の奥の方を見ると桜ちゃんが段ボールの山の中でクマのぬいぐるみとおままごとをしていた。

手のかからない子だな。

「ありがとうございました。郁美さんが居なかったら幼稚園に行けませんでした」

手のかかる大人だ。

「よかったですね」
棒読み返事で桜ちゃんを見て癒されてると

「心配なんです」

そっと田辺さんが言う。

ふと見ると
憂いを帯びた顔。

色っぽい
じゃなくて……どうした?

「桜は……母親がいないんです」

深刻な顔で私に言うけど

いまさらかいっ!
もう町内中知ってるよ。

「あ……わかってます」
素直に言うと

「ええっ!」って
リアクション芸人真っ青の動きで驚く。

逃げられたんでしょう……は、言いませんが。

「どうしてわかりました?」
声がデカい
本気でその質問するか。

「いや、何となく」
ごにょごにょと誤魔化すと

「やっぱり僕から出る哀愁ってやつでしょうか」

真面目に言うので
本気で殴りたいと思った瞬間。

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