隣に座っていいですか?
桜ちゃんを家に残し
私は田辺家に向かう

やっと子供の熱が下がったのに
今度は自分かいっ?
情けない男。

半分イラっとしながら
堂々と中に入ると
リビングのソファの上で男がうなっていた。

重症?

ソファに沢山毛布をかけて
頭には子供用の冷えピタ
水枕をし
大きな身体を丸くして虫のよう。

「田辺さん?」
声をかけると
田辺さんはうなり声を止め
ウルウルとすがる目で私を見上げる。

捨てられた子犬か。

「郁美さん。苦しいです」

【苦しいです。助けて下さい】

そんな言葉が実に似合う男だ
呆れるより感心してしまう。

「病院は行きました?」

「お金かかるから行ってません」

どんだけ貧乏?

「薬はありますか?」

「はい。飲んでます」

「何か食べてから飲みました?」

「ポテチとじゃがりこを食べてから飲みました」

お菓子かよっ!

「それで、今熱は?」

「あ、待って下さい」
丁度ピピピと鳴り
田辺さんはその数字を見てまたクラーっと来ていた。
何?そんなに熱高いの?
それならもう少し優しい言い方をすればよかったか……と、一瞬でも思った自分に後悔。

「37度5分もあります。もう僕はダメです」
やっぱり涙目。

本当ですね
ダメな男ですわ。




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