隣に座っていいですか?
小さな柔らかい存在が愛しい。
こんな可愛い存在を残して亡くなってしまった、田辺さんの奥さんの気持ちを思うと胸がしめつけられる。

「おっ桜ちゃん」

「おじさん。こんにちは」
私の腕から離れ
奥から出てきた頑固親父にごあいさつ。

「おじさんお土産買ってきたぞ」

ん?お土産?

すると
また奥に一度戻り
小さな袋を持ってきて桜ちゃんに渡す。

桜ちゃんは私の顔を一度見て
紙袋を開けると

そこには
フワフワウサギのマスコット。

頑固親父
買ったのか?
どんな顔で買ったんだ?
こんな可愛いウサギのマスコット。

「かわいい」
小さな手のひらにすっぽり入るウサギのマスコット。

「おじさんありがとう」
目をキラキラ輝かせて
桜ちゃんは頑固親父に何度も礼を言う。

うわぁ
このニヤケ顔。
私には温泉まんじゅうしか買ってこないのに。

「そば食べるか?」

「はいっ!あ……でもダメです」

遠慮してる?

「お父さんがまってるので、さくらはかえります」

「お父さんも連れて来るか?」
仕方ないなって顔で私の父が一言。
田辺さんならきっと大喜びで来るだろう。

「このウサちゃんを見て、お父さんのおねつも下がればいいなぁ」
桜ちゃんはウサギを撫で、溜め息混じりにそう言った。

何?誰がお熱?

不思議そうな顔の私を見上げ

「お父さんがこんどはカゼをひきました」

「はぁ?」

「さくらのカゼがうつりました」



あの

へタレが……。
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