Z 0 0 Ⅱ
「ら、ラビさん?」
「ん?」
変に裏返った茅野の声に笑うわけでもなく、ラビは至って普通に反応を返した。
いつもは頼もしいと思えるその態度も、こんな時ばかりは全くありがたくない。
人間なんて簡単に踏み潰してしまえそうなお尻と、少し振るだけで致命的な一撃になりそうな腕の前では。
「あの、ナマケモノって」
「お、ナマケモノなんてよく知ってるな」
「違いますっ! な、ナマケモノって、」
茅野はもう完全にラビの腕にしがみついてしまっていたが、そんなことを気にする余裕は、全くなかった。
なんだかこっちに来てから、感情表現が上手くなっている気がする。
それが良いことなのか別にどうでもいいことなのか今はわからないが、とにかく茅野は、身の危険を感じていた。
「こんなに大きいんでしたっけ……!?」
茅野の伸ばした人差し指に向かって、巨大なナマケモノが手を伸ばしてきた。
心なしか、機嫌良さげに見える。
茅野の頭より大きい手に、茅野の腕より太い爪が三本、並んでいる。
それが自分の指先に触れた瞬間、茅野は卒倒しそうになった。