Z 0 0 Ⅱ


「あの……、取り乱してしまってすいません」
「いや……俺も悪かったよ。あんなに怖がるとは思わなかった」
「自分でも思いませんでした……」


茅野がふらりと倒れそうになって一番慌てたのは、なぜか、腕を伸ばしてきたナマケモノだった。
人に怖がられることに慣れていないらしい。
今は少し離れたところで、膝を抱えて背中を丸めている。


「熱帯ゾーンの名物なんだ。人懐っこくてすぐ寄ってくるけど、危険はないよ。事前に言っておけばよかったか」
「いえ……、」


茅野は座っていた切り株から腰を上げて、大きな茶色い背中へと近付いて行った。

自分でもどうしてあんなに恐怖を感じたのはわからないので、慎重すぎる足取りが不思議に思える。
できるだけ大きな手を見ないようにしながら、茅野はナマケモノの前へと回って、サングラスを外した。

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