猫を撫でる。


高部が美梨の制服のシャツの襟元に手を掛け、乱暴に引っ張った。

ビッ!と音がして、シャツが裂け、ボタンがいくつか弾け飛んで、下着の胸元が見えた。


『イヤ!』

驚いた美梨が両手で胸を隠すと、高部は美梨の頭を思い切り、平手ではたいた。


『ぶりっ子してんじゃねーよ!
この勘違い女!』

『見せまくってるくせして』

『お前なんか、そうしなきゃ
誰も相手しねえんだよ!』


高部たちは、容赦なく罵詈雑言を浴びせてきた。

抵抗する術もなく、ただ頭を下げて泣く美梨の耳元でジョリ、という嫌な音がした。


仲間の一人が、裁ち鋏で美梨の長い髪を一束、切り落とした音だった。


『やめてよー!!』


美梨は胸元を手で押さえながら、泣き叫び、そのまま崩れ落ちた。


高部たちは『ブスの私は奥田勇とは付き合いません。申し訳ありませんでした』と土下座して言うよう、美梨に強要した。


美梨はしゃくり上げながら、その通りにした。


… 額に付いたざらついた冷たい土の感触は、17年経った今でも忘れられない。


思い出すだけで、おぞましく忌まわしい過去だ。



< 18 / 40 >

この作品をシェア

pagetop