猫を撫でる。


目覚めた時、美梨は、ルルが夢に
出てきたと思った。


どんな夢だったか思い出そうすると、出てきたのは、うちからさほど遠くない川に架かる橋だ、と思いついた。


その橋の下の緑の草が茂る河原を、
グレーの美しい猫が歩いている姿が頭に浮かんだ。


早朝だったが、美梨はいてもたってもいられず、車で五分ほどのその橋の下へ駆け付けた。


急いで土手を降りて、ルル!と呼び掛けた。


するとーー

なんとルルがいた。


夢の通り、緑の雑草が生い茂る中、ルルは「ニャーニャー」と可愛らしく鳴きながら、美梨の元へ小走りしてきた。


「ルル!良かった!無事だったのね…」


美梨は泣きながら、ルルを抱きしめた。

ルルの少し湿った毛皮の感触ーー

美梨は猫の背中を何度も撫でた。



ーーあれは、美梨が生まれて初めて
見た不思議な正夢だった。


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