ライラックをあなたに…


18時過ぎに一颯くんのマンションに到着した。

今朝、出掛ける時に貰った合鍵で部屋に入ると……。


「………やっぱり、いないよね」


一颯くんの姿は見当たらない。

17時からバイトが入ってるって言ってたもんね。



ふと、ダイニングテーブルに視線を落とすと、そこには1枚のメモ紙が置かれていた。



『 バイトに行って来ます

  夕ご飯は冷蔵庫にあるので温めて下さい

  何か困った事があったら、電話下さい

             一颯 』



人柄を現すような綺麗な字で書かれた置手紙。

思わず、読み返してしまった。



彼が用意してくれたのはシーフードドリアとグリーンサラダ。


毎々、彼の手料理を見て感心する。

普通、私みたいな女子だって滅多に作らないよね?


休みの日ならともかく、大学に行って、バイトまでの空き時間にこれ?

………頭が下がります。



「一颯くん、ありがとうね」


思わず、声が漏れ出していた。

言わずにはいられないよ、こんなに良くして貰って……。



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