ライラックをあなたに…


いつも綺麗に整頓されている室内。

そして、いつでも手入れの行き届いてる草花。

さらに極めつけが、オトナ女子でも唖然とする程の手料理の数々。


何から何まで完璧なんだろう。



この数日間で『本間一颯』という人物を見て来たが、荒が1つも見つからない。


人間、1つくらい荒がある筈だと、そんな事を探している私の心の方がよっぽども荒んでいる。



私にも、彼の為に出来る事があるだろうか?


命を救ってくれた恩人だし、家無し金無し仕事なしになりそうな私を受け入れてくれた。



そんな彼に、何かしてあげれる事を探さないと……。



私は悶々と考えながら、着替え一式を手にしてシャワーを浴びに行く。





浴室から出た私は肌の手入れを施し、髪を乾かして、一颯くんが用意してくれたドリアを温めた。



リビングテーブルにドリアとサラダを置いてラグの上に座ると、ソファの上に置いてある携帯電話が震え出した。


手を伸ばしディスプレイを確認した私は、表示されている二文字を見て、一瞬で硬直した。



< 164 / 332 >

この作品をシェア

pagetop