ライラックをあなたに…
「起きたんだね、身体は大丈夫?」
「………」
先程と同じ、心地良い声音につい、彼の動きを目で追ってしまう。
ベッドサイドに腰掛けた彼は、大きなマグカップを差し出した。
「二日酔いには効くよ」
柔らかい表情を浮かべ、私の手にそれをそっと握らせた。
「あの……」
彼に聞きたい事は山ほどある。
けれど、何から聞いていいのかさえも上手く思考が働かない。
回らない頭で必死に答えを探していると、
「大丈夫。話なら、それを飲み終えたらゆっくり聞くから」
彼は優しく微笑み、手の中の飲み物を促した。
一先ず、話は飲んでからでも遅くない。
私は彼に促されるままに、それを口にした。
甘酸っぱくて、後からコクのある甘みが口に広がる。
「美味しい?」
「………」
私はそれを口に含んだまま、小さく頷いた。
この飲み物は何だろう?
分からない事がまた1つ増えた。
彼が柔和な表情を浮かべて見守る中、私は彼が差し出したそれをゆっくりと飲み干した。