睡魔をイケメンに擬人化してみた

4 睡魔召喚


なつみ「・・・・・・」

睡魔「・・・・・・」




なつみは、今起きている状況を、飲み込めなかった。
ただ五感が、主人の意思とは関係なしに、情報処理を始める。



なつみの想像した通りの、いや、それ以上の美男子が、そこにいた。



気づけば、部屋に太陽と土の香りが漂っている。



―なるほど、妄想とリアルは違うなあ。まだまだ妄想が甘かったな。



状況を飲み込めないまま、想像以上のリアルさに、なつみは舌を巻いた。








妄想とリアルの大きな違いは、体温だとなつみは思った。


目の前に現れたイケメンには、熱量があった。

一メートルは離れて向かい合っているはずなのに、確かな熱を感じる。


それに、呼吸。


さっきまでと、部屋の空気の流れが違う気がする。


体温と呼吸によって、人に気配が生まれるのであろうか。



今までずっと一人暮らしの部屋に、五年前に別れた彼氏も、一度しか来たことのないこの部屋に、他人がいる。

しかもイケメンの。



読者の皆さんは、普段夢を見るとき、夢を見ていると自覚しているだろうか。

多くの人が、夢の中では、夢を見ているという自覚はないのだが(逆に自覚できるようになると、夢の中で自由に振る舞えるようになるそうだ)、なつみはまさに、そういう状態であった。



-さすが私の妄想。ものすごいイケメンだなぁ。


なつみは呑気に感心していた。

夢を見ているときに夢にどっぷり浸かっている、あの感覚であった。




とうとう、睡魔が口を開いた。




睡魔「あっと、どーも」

なつみ「!?」

睡魔「はじめまして。睡魔です」

なつみ「え…はあ」

睡魔「えっと…、呼び出したのはあんたなのに、随分な態度だと思うんだけど」

なつみ「えっ、ご、ごめんなさい。驚いてしまって。でも、なんで勝手にしゃべってるの?私が妄想しているのだと思うのだけど。しゃべれるの?」

睡魔「まぁ、あんたの想像上の生き物だし、しゃべれるでしょ。あんたがそういう設定にしたんじゃない?」

なつみ「えっえっ。そうだけど…そうなの?あれ?」

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