なんで俺じゃあかんねん

「ひとつひとつの、鍵盤。

全然違う音やのに・・・・

合わさると、ひとつじゃ絶対にだせないような、壮大な音になる。

その音が、また次に重なって、綺麗な曲になる。


不思議なことばっかり。だから、好き。

わからへんくて、楽しい。」


「わからんのに、楽しいん?」

「うん!」


頷いて笑った雅さんは、今までに見たことのないような幼さがあった。

いつも、大人びてるイメージやったけど、

今の彼女は、ただピアノが好きなだけの、女の子や。



はじめて知った雅さんの一面に、ちょっとだけ鼓動がはねた。



葵以外の子に、はじめてや。

こんなん。


俺・・・・





「今の曲は、ショパンの『子犬のワルツ』。

わたしが、一番好きな曲。」


雅さんは、自然とまた曲をひきはじめる。

ショパンの『子犬のワルツ』。

名前も、曲も単体では聴いたことある。

けど、それが一致したのは今だった。


雅さんとピアノ。

まるで、一心同体。

ピアノが音を奏でてるのにまるで雅さんが奏でてるみたいや。


楽しそうに、愛しそうにピアノを引き続ける。



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