なんで俺じゃあかんねん


「雅さんのピアノを聞いてると、心が和むねん。
だから、また聞きたいって思う。

聞きにきたらあかんかな?」

遠慮がちに尋ねると、彼女はパッと花開くように笑った。

「そんなことないよ!」

嬉しそうに俺を見る。

「わたし、月曜日のピアノ教室の日以外はいつもここで練習してるから。」

「そっか。

雅さん、めっちゃ頑張る人やねんな。」

「そんなこと・・・・」

恥ずかしそうに小さく否定する。


殊勝(しゅしょう)な態度が好ましくて

「やっぱりすごいわ。」

ともう一度褒めると、さらに顔を赤くした。


「そんな、こと・・・・。」

またうつむいてしまった。


「雅さん?」

「な、なんでもない、です・・・」


ちょっと顔をあげた彼女は、俺から視線を外して
誤魔化すように髪の毛を耳にかける。


「あ、ありがとう。

それより・・・・坂井くん、こんな時間までどしたん?部活?」


慌てて話題を変えるように話をふってきた。



「え!?」

さっきまで告白されていた手前、その質問に動揺する。


「あ、いや、まあ、うん・・・・そんなとこ?」

「ふうん・・・。

でも部活やったら、体育館よね?」


変なところで敏感やな。

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