なんで俺じゃあかんねん
でも、これこそクラスメイトに言う内容じゃないしな。
ていうか、誰にも言ったらあかんやろ。
「ちょっと、教室に忘れ物?とか・・・。」
ははは、と笑う。
教室と、この第二音楽室じゃ方向が違うから
めっちゃキツイ言い訳やな。
「そうなんや。」
でも、雅さんは納得してくれたみたいや。
ホンマに納得したのかは、微妙やけど。
「それよりさ、もうすぐ完全下校やで?
帰らんの?」
「あ、うん。そろそろ帰るところ。」
「じゃあ、帰ろう。」
「え?!」
あ、なれなれしいか。
いきなり、一緒に帰るとか。
なにも気にせず、誘ってた・・・。
「あ、ごめん。俺、帰るわ・・・・」
「ちょっと待って!
帰る、わたしも帰る。」
「そう?」
そそくさと楽譜やらなんやらを片付けている彼女を
俺は黙ってみていた。
やっぱり、ちがうな。
教室の雅さんと今ここにいる彼女。
全然違うわ。
でも、こっちの雅さんの方が自然やな。
人間らしいっていうか。
たぶん、こっちの雅さんが本当の雅さんなんやろうな。