なんで俺じゃあかんねん
「なにすんねん!
今のは、ホンマに痛かったぞ?
聞いたか?音的に、もう痛いやろ!?」
さするだけでなく、ふーふーと息まで吹きかける。
服の上から吹きかけても意味ないやろ。
「うるさい!おまえが悪い。」
こんな人いっぱいおるところで、何言い出すねん、こいつ。
いや、おらんとこでも言われたら腹立つけど。
こいつは、俺が葵を好きなことを知ってるただ一人の奴。
そもそも俺が気づいたのも、こいつに言われたからで
なんか、昔っからやけに鋭いところがあるからな、リキトは。
「ごめんって。」
全然悪びれもなく、ニヤニヤしてるのがまたムカつく。
『でも、ホンマやろ?』と小声でまだ聞いてくるから、もう一回しばいておいた。
「なあ、リキト。」
「ん?」
「おまえ、M高の行き方知ってる?」
「あたりまえやろ。でないと、行けんやん。」
そりゃ、そうやな。
「まさか、ハル知らんのか?」
信じられん、みたいな目で見てくるから、居心地悪くて視線を逸らす。
「おまえ、いっつも肝心なとこであかんよな。」
それに関しては何も言えん。
「合格発表のときも行ったやろ?」
いやいや、たった数回で覚えられるおまえほど、
俺の頭はできてないからな。
ギリギリ合格なめんなよ。