なんで俺じゃあかんねん
「ちゃうって!そんなんじゃなくて、友達やって。」
「友達!?あの天才と?」
遼は、そこに驚いたようだ。
「うん。確かに、ピアノに関しては天才やけど、普通やで?雅さんは。」
「いや、そのピアノがさ・・・すごすぎて、なんか近寄り難いっていうか。」
「あ~なるほどな。」
そういう遼の気持ちはちょっとわかる。
雅さんは確かに、別世界の人って感じのオーラがあるから。
そう簡単には話しかけづらい。
俺だって、最初は『馴れ馴れしい?』とか気を遣ったから。
「坂井くん!!」
ん・・・・?
いきなり、女の声が俺を呼んだ。
そこにいたバスケ部の奴らもびっくりしたように声の主を見る
俺も名前を呼ばれて反射的に振り返った。
「あ・・・・。」
そこにいたのは、綺麗に巻かれた長い髪を今日は上の方で横結びしている女子。
髪型は違うけど、あたりまえに顔は一緒。
もちろん、妙に艶のあるあの唇も。
その唇が可愛く小さな弧を描いて
大きく長いまつげで飾られた瞳はにっこりと俺を見つめる。
「清水さん・・・・。」