なんで俺じゃあかんねん

目の前にいる人間の名前をつぶやいた俺に彼女はまた笑いかけてくる。

そして、今度は手まで振ってくる。

こんな至近距離で。

まあ、可愛いけど。

苦笑いで見上げる俺に、彼女は「なに食べてるん?」と話しかけてきた。


「から揚げ丼。」

「坂井くんって、お弁当じゃないんや~。」

「今日は母さんが寝坊したから。」

そして、葵は、自分の分しかつくらんくて、仕方なく。

「あ、そうなんや~。じゃあいつもはお弁当?」

「うん。そういう清水さんは?」

「ウチは、アイス買いにきただけ~。」

そう言って今買ったばかりであろうアイスを見せてくる。

「そうなんや。」

俺が愛想笑いを浮かべると、彼女の方は極上に可愛い笑顔で応える。

もしかして・・・・アピールされてる?

自意識過剰かもしれないけど、なんか、必要以上の愛想を向けられている気がする。

笑うごとに、首かしげて疲れへんのかな・・・・?



「茉莉、坂井くんと友達なん?」

アイスを買った友達二人もやってきた。

「ん~?友達っていうか、ほら、ウチまえに告ったから・・・」

「っちょ!!」

それ、言っていいん!?

俺、バスケ部の奴らどころか誰にも言ってないのに。

「あ、この子ら知ってるから。

ウチが告ったことも。まだ返事もらってないことも。」

にこっとなんの焦りもなく言う。


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