なんで俺じゃあかんねん

食堂を出て、雅さんが歩いていった方に向かうと

電話を切って、うつむきながらため息をつく彼女がいた。


「雅さん!」

「・・・っ!」

びっくりしたようにこちらを振り返って、少しほっとしたように息をつく。


「坂井くん。どしたん?」

「どしたん?はこっちのセリフやから。

食堂から、電話しながら歩いていくの見えて。

なんか、様子おかしかったから。どうかした?」

電話の内容が気になる。

ピアノ関係のことかな?

雅さんにあんな顔させるのは、きっとピアノのこと。

彼女と仲良くなって、彼女との時間が長くなればなるほど、ピアノの存在の大きさを感じる。

俺にとってのバスケみたいな。

雅さんに感じるこの感情は、彼女の気持ちがわかるからなんかな。

最初、雅さんの悩みを聞いたとき
ピアノがどれだけ好きかが伝わってきた。

俺も、バスケがめっちゃ好きやから。

もし、そのバスケが嫌いになりそうになったらって考えたら
きっと怖い。


だから、他人事じゃないような気がして。




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