なんで俺じゃあかんねん

なにも言わない。

俺は静かに歩み寄って電話を指さす。

「ピアノのこと?」

雅さんの目が少し見開かれる。

それから、また俯き小さく頷いた。

「お母さんから。

コンクールエントリーしたって。勝手に。」

勝手に?

「なんも相談なかったん?」

「うん。いっつもそうやねん。

私が出るはずやのに、いつも知らんとこで決まってて

参加することも、その曲も。」

「そんな・・・それっておかしくないか?

雅さんがでたいコンクールに、弾きたい曲で出るもんちゃうん?」

素人の考えやから、わからんけど。

どういう仕組みになってるんかも知らんけど。

でも、おかしいってことはわかる。

雅さんのことを雅さんが決められへんなんて、そんなことないやろ。

「ありがとう。」

困ったように少し笑って俺を見る。

< 184 / 485 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop