なんで俺じゃあかんねん
海岸についたら、人がいっぱいいた。

夏やし、あたりまえか。


俺らは、少し隅で石段に腰掛けて、海と人々を見ていた。


「ハル。」

眼鏡越しに葵と見つめあう。

「ん?」

姉弟の時は、全然できなかったけど
今ならこうして、自然と葵に優しくなれる。

葵を見る目が、他を見る目と違うことなんて、とっくに自覚している。


「改めて思ったけど、ハルの友達ってみんないい人やね。」

「うん・・・。」

「あのね、ハル。」

「うん。」

「私、ハルに言ってなかったことがある。」


言ってなかったこと・・・?

「なに?」

「私、中学の時、リキトくんと付き合ってことあるんよ。」


ああ・・・・。

そうか。


葵はまだ、俺が知らんと思ってたのか。


俺は何も言わず聞くことにした。



「中2のときに、告白されて付き合うことになった。

けど、その時にはもうハルのことが好きで
それで、りっくんもそれに気づいてて、すぐ別れた。」


葵は、少しうつむいて自嘲気味に笑う。


「最低なんよね。
りっくんにも、去年付き合ってた相崎くんにも。

結局私はハルが好きやのに、それが叶わへんから、他の人と付き合って
傷つけて・・・最低。」

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