桜縁
沖田がこの近くにまだいるかもしれない。
その者はこの辺り一体を捜索することにした。すると、辺りの空気が変わる。何者かが近づいて来ているようだ。
辺りを警戒しながら、身構えながら進む。
突然、茂みが大きく揺れ、何者かが飛び出して来た。
「!」
刀と刀がぶつかり合う。
「……あれ、一君?」
「総司……?!」
茂みから飛び出して来たのは、ずっと捜していた沖田だった。妙な形で再会する二人。
「あんたはいったいこんな所で何をしていたんだ!?散々捜したのだぞ……?」
「その話なら後でするよ!それよりも大変なんだ、すぐに医者を呼んできて欲しい……!」
「医者を……?なら、山南さんか山崎君が妥当だが……、いったい何事だ?」
見たところ沖田に目立った外傷はない。だが、沖田はかなり慌てている。こんなに慌てる彼は見たことがなかった。
「助けたい子がいるんだ……!だから、頼むよ!」
何がなんだかよく分からないが、この沖田の慌てようはただ事ではなさそうだ。
「分かった!」
斎藤はすぐに助けを呼びに向かった。
治療が早かった幸いにして、月の身体には毒が回らずにすんだ。
そして、沖田も無事に浪士組の屯所へと、帰還するのであった。
「……で、これはいったいどういうことなんだ 総司?」
眉間にシワを寄せ、目を吊り上げる男。
浪士組の副長である【土方歳三】だ。
そしてその隣に座るのが総長である【山南敬介】である。
この二人を前にして、視線を外す沖田。
「なんで、斎藤と一緒に長州へ向かったお前が、女を連れて戻るんだ?しかも、毒にあてられて戻って来るとは、あの娘は何者だ?」
「いやだな、土方さん。僕が間者かなんかを連れて来たと思ってるんですか?」
「真面目に答えろ!」
「事実、毒が出て来たのなら、何らかのことを疑わなければなりません。」
「大丈夫ですよ。あの子はたまたま一緒になっただけだし、薩摩の奴らもそれ以来追って来ないんですから、人助けですよ。」
もし、間者たぐいの者であれば、沖田が見逃すはずがない。その事は土方も山南もわかっていた。
「……分かった。お前がそう言うなら、それを信じることにしよう。」
「なら、僕はもう行っていいですよね?近藤さんにも挨拶したいし。」
「ああ、行って来い。」