桜縁
その語尾には、重みがあった。
どうやら、動き出す時が来たようだ。辺りに緊張感が漂う。
「それはどういった意味でしょう……?」
「彼らを殺す。」
「!!」
「この会津と幕府を守るには、彼らに消えてもらわなければならない。」
「で、ですが…!お父上を暗殺するのは………!」
いくら敵に藩を売り渡すといっても、子供が親を殺すのは、些か抵抗があった。
「今までずっと耐えて来たのだ。会津が無くなってしまえば、民はもちろん私やお前達だって無事ではすまされまい。だから、父上にはこの会津のために消えてもらう。」
「…………。」
藩主は多くの罪を犯し過ぎたのだ。会津が売られる前に型を付けなければならない。
他の者達も同じ考えであった。
「ですが、彼らが同意するでしょうか?」
新撰組の近藤と芹沢は仲は良くないが、共に協力し合った仲でもある。
そんな者達が仲間を殺すことが出来るのか、少々心配な点があった。
「殺せる。……志が違うのだ。芹沢がいては、今後の新撰組の存続に関わる。それは近藤局長も土方副長も分かっている。」
「分かりました。沖田の方はいかが致しましょう?」
「沖田には私の文を届けよ。そして、読んだらすぐに燃やせと言い伝え、この計画が知られることのないようにせよ。くれぐれも注意を怠るな……!」
「はい…!」
こうして、会津藩主と新撰組局長・芹沢鴨の暗殺計画が実行されることとなった。
運命の歯車がゆっくり、ゆっくりと回りだすのであった……。
夜、一人部屋で寝転ぶ沖田。
もうすぐ、蛍との婚礼が行われる。
結婚をすれば、長州の情報や敵についての情報を知ることが出来る。また、薩摩の情報も多少手に入れることも出来るだろう。
そうすれば、月の兄についての情報も手に入るかもしれない。それを知れば月も少しは安心するのではないかと考えていたのだ。
ふと、外が騒がしくなり始め、大勢の足音が聞こえてくる。
こんな夜更けに活動するにしては妙だ。
沖田はゆっくりと表へと出た。
会津藩邸の前に兵士達に囲まれ、たくさんの女達が連れてこられていた。
夜更けだというのに、全員ボロを纏い、中には怪我をしている者もいた。
中から藩主達が出て来る。
「この者達は?」
「遊郭に売る女達でございます。店に売る前にと思いまして。」