桜縁


その語尾には、重みがあった。


どうやら、動き出す時が来たようだ。辺りに緊張感が漂う。


「それはどういった意味でしょう……?」


「彼らを殺す。」


「!!」


「この会津と幕府を守るには、彼らに消えてもらわなければならない。」


「で、ですが…!お父上を暗殺するのは………!」


いくら敵に藩を売り渡すといっても、子供が親を殺すのは、些か抵抗があった。


「今までずっと耐えて来たのだ。会津が無くなってしまえば、民はもちろん私やお前達だって無事ではすまされまい。だから、父上にはこの会津のために消えてもらう。」


「…………。」


藩主は多くの罪を犯し過ぎたのだ。会津が売られる前に型を付けなければならない。


他の者達も同じ考えであった。


「ですが、彼らが同意するでしょうか?」


新撰組の近藤と芹沢は仲は良くないが、共に協力し合った仲でもある。


そんな者達が仲間を殺すことが出来るのか、少々心配な点があった。


「殺せる。……志が違うのだ。芹沢がいては、今後の新撰組の存続に関わる。それは近藤局長も土方副長も分かっている。」


「分かりました。沖田の方はいかが致しましょう?」


「沖田には私の文を届けよ。そして、読んだらすぐに燃やせと言い伝え、この計画が知られることのないようにせよ。くれぐれも注意を怠るな……!」


「はい…!」


こうして、会津藩主と新撰組局長・芹沢鴨の暗殺計画が実行されることとなった。


運命の歯車がゆっくり、ゆっくりと回りだすのであった……。






夜、一人部屋で寝転ぶ沖田。


もうすぐ、蛍との婚礼が行われる。


結婚をすれば、長州の情報や敵についての情報を知ることが出来る。また、薩摩の情報も多少手に入れることも出来るだろう。


そうすれば、月の兄についての情報も手に入るかもしれない。それを知れば月も少しは安心するのではないかと考えていたのだ。


ふと、外が騒がしくなり始め、大勢の足音が聞こえてくる。


こんな夜更けに活動するにしては妙だ。


沖田はゆっくりと表へと出た。





会津藩邸の前に兵士達に囲まれ、たくさんの女達が連れてこられていた。


夜更けだというのに、全員ボロを纏い、中には怪我をしている者もいた。


中から藩主達が出て来る。


「この者達は?」


「遊郭に売る女達でございます。店に売る前にと思いまして。」
< 53 / 201 >

この作品をシェア

pagetop