桜縁




「……そっか、そういうことだったのか。」


「だから、蛍さんのことは私なりの罪滅ぼしです。」


そう、蛍は月が暗殺仕掛けた者だとは知らないでいる。


それがせめてもの救いであり、罪滅ぼしが出来る機会でもあった。


「なら、僕も似たようなものかな……。」


「?」


「僕にも姉が一人いたよ。」


「お姉さんがいるんですか?」


姉がいたとは初耳だ。ってきり沖田は、近藤の身内か何かだと思っていた。


「うん。でも、結局捨てられちゃったんだけどね。」


月も沖田も兄弟と生き別れ、一人ぼっちになったってことだ。


「でも、お姉さんの居場所は分かるのでしょう?居場所が分からないよりずっとましです。それに、捨てたくて捨てたんじゃないと思いますよ。」


「なんで?」


「だって、兄弟と離れて寂しいがらない人はいないじゃないですか。」


月がそう言うと、沖田はスッと目を細めた。


「そうだね。……そうだったらいいな……。」


沖田は淡く微笑んだ。


庭へ出ると、月明かりに照らされて、円がいくつも描いてあった。


おそらく昼間沖田達が遊んだものの跡のようだ。


「少し遊んで行こっか?」


「こんな夜中にですか?」


「大丈夫、誰も見ていないよ。」


沖田に誘われ、月は初めて宮中の遊びをやった。二人の時間が穏やかに流れる。


「はい、また僕の勝ち。」


「!」


しまった……!


また、沖田が勝ってしまった。これでは勝負になっていない。


月は沖田にこてんぱんに打ち負かされていた。


「じゃあ、約束通りお願い聞いてよね。」


「はいはい。」


ただ勝負するだけじゃあ面白くないということで、勝った方の言うことを一つだけ聞く、というルールを作っていたのだった。

で、結局負けた月は沖田の願いを聞くはめになっていた。


「でもその前に、もう休もうか?さすがにこのまま起きていたら、明日は辛いし……。」


「そうですね。」


ザワザワと側で木が揺れる。夜空の月が西に傾きかけていた。


「明日は稽古をされるんですよね?」


「うん、さすがに腕が鈍ちゃうしね。」


部屋に篭りっきりでいたから、久々に刀を握ることが出来るのだ。とは言っても稽古だから、竹刀に他ならない。


「月ちゃんも来るでしょう?」


「はい、蛍さんの傍にいなくてはいけませんから。」


< 62 / 201 >

この作品をシェア

pagetop