抹茶モンブラン
 誰にも心を開かず、誰の事も信用せず、自分だけを信じて生きている彼は、当然敵も多いし陰口の対象になりやすい。

 孤独が好きな人間なんて、そうはいないと思う。
 誰だって、独りで生きるのは寂しいはずだ。

 一人でいい。
 世界中でたった一人でいい。

 愛する人に出会いたい……愛される存在でありたい。

 私は、夫と別れてからずっとこんな事を思っていた。
 そんな存在に出会えるかどうかなんて全く分からなかったけど。

 堤さんはどうなんだろう。
 車の中でのセクハラな言葉は、孤独な彼が発した魂のヘルプだったようにも感じられてきた。

「私……具体的に何をすれば堤さんのお役に立てるんですか?」

 ふと自分の存在が彼を少しでも救えるなら、私も生きる価値を見出せるような気がした。
 それが世界で唯一の相手でなかったとしても、今この瞬間を支えるのがお互いの心に必要なら、傍にいる事も嫌ではないと思っていた。

 波がバシャンバシャンと音を立てる中、少しの沈黙の後、堤さんは言った。

「いてくれるだけ。それだけでいい。君の顔を見ていたい……本当にそれだけさ」

 誰もいない海ほたるの甲板みたいなつくりになった場所で、私と堤さんは見つめ合っていた。
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