抹茶モンブラン
 廊下ですれ違うと、微かに笑みを浮かべながら会釈をする。
 空模様を見る為に窓の外に身を乗り出している姿。
 休憩室で、新聞の上につっぷして居眠りをしている姿。

 こんな何気ないシチュエーションを繰り返し見る度に、僕の彼女への好意がどんどん強くなるのが分かった。
 恋人になって欲しいとか……そういうレベルまでは考えていなくて、単純に乙川さんがいてくれたら、落ち込む自分の気分を少し立ち直してもらえるんじゃないかと思った。
 ちょうどデータ処理の簡単な作業をお願いしたい人を入れて欲しいと人事に言うところだった。
 その機会を利用して、僕はサポートを彼女にお願いしたいと申し出た。

 幸いというか……僕の我がままな注文は通る事が多く、今回も希望通りになった。
 自分の研究成果を会社の目玉に据えられているのは分かっている。
 正直それを逆手に取って無理な注文もつける事が時々あって、影では扱いにくい男だと思われているのは分かっている。

 優しい紳士とは到底思えない自分だけれど、もし乙川さんが少しでも心を傾けてくれたなら、彼女が驚く程大事にしたい気持ちは少しずつ芽生えていて……。
 自分にもそういう異性を大事にしたい気持ちがあったんだと少し驚いているぐらいだった。

 乙川さんの目に自分がどう映っていたのか分からない。
 それでも、一緒に仕事をするのは自然な空気だった。
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