抹茶モンブラン
 僕は縄張り意識が強く、半径5m以内に気に入らない他人が入り込もうとすると嫌悪感が沸く。
 でも、すぐ近くで後姿を見せて仕事をする彼女がいるのは、どちらかというと心地よかった。

 近くで仕事をするだけでいいと思ってはいたものの、会議やら何やらで結局僕は仕事に追われる日々。
 欲求がエスカレートして、とうとう僕は積極的に彼女を誘うという行動に出た。
 その前から何か事情があるようで、薬を常用してるふうなのは分かっていたけれど、そういうのは触れられない事だろうから、黙っていた。

「僕を癒して欲しい」

 なんて……自分でもつくづく最低だなという言葉を彼女に言ってしまった。
 女性のプライドを傷つける最低な言葉だった。
 当然彼女は怒ったし、想像以上に泣かれて、僕に対してあそこまで感情をあらわにする女性っていうのも初めてで、相当驚いた。
 最低な男ぶりを車内で口にしてしまった為に、あっという間に彼女には嫌われるところだったけれど、正直に自分が限界なんだという事を伝えた。

 何故だろう。
 乙川さんの存在を感じるだけで、僕は「生きて前を向いていこう」と思える。
 それまでの陰鬱な自分が少しずつ払拭されるのが分かる。
 話してみても、普通の女性なんだけれど……何か心に決めたらそれを大事に守る性格なのかなというものを感じた。

 一度世話をした動物に情が出て手放せなくなるような……そんなタイプ。
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