抹茶モンブラン
 多分僕の態度や言葉は乙川さんに甘えていたんだと思う。
 華奢でいかにも弱々しそうな年下の女性に、何とも言えない癒しのオーラを感じた。
 僕の目を「捨てられた子犬みたいだ」と言って、彼女は僕を受け止めてくれた。
 あんなに自分の弱みを見せられた相手っていうのも生まれて初めてで……乙川さんと出会う為に僕はここまで誰の事も愛さずに生きてきたんだろうかと思ったりするぐらいだ。

 嫌われていないのを確認して、僕は彼女が抱えているだろう何かつらい過去を一緒に背負ってあげられるなら……なんてガラにも無い事を思っていた。
 時間が割けないなんて言い訳で、結局本を読んだり資料を目にしていたら何か自分が存在する意義があるかのような錯覚を覚えるから「生きている証」の為に僕は仕事人間になっていた。

 乙川さんの存在が、僕の心を変えた。

 彼女の為なら一緒に過ごす時間を見つけるのは苦痛じゃない。
 週に1日ぐらいは空けてもいいと思うぐらいだ。

 30歳にして、初恋か?
 笑えるな……、他人が聞いたら本気で笑われそうだ。

 それでも、僕は海ほたるで抱いた彼女の体の温もりを忘れられない。
 好きになってくれるまで待つと言ったけれど、本当なら今すぐにでも彼女の全てを知ってしまいたい衝動に駆られる。
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