† Lの呪縛 †
「ノエル……これはオリヴィアの為でもあるのよ? 何のしがらみもない、安らぎのある生活をさせてあげたいの。 きっとあの子は私たちでは計り知れない程、辛く悲しい思いをしてきたんだと思うから」

「分かってるさ、そんな事」

「そう、ならいいわ」



ノエルは表情を変えず、テーブルの下でつくった拳にグッと力を入れた。


二人の空気は重たいまま、辺りはシーンと静まり返った。


聞こえるのは風の音と木の葉が揺れる音だけ。


温かく柔らかな風が二人を撫でる様に通り過ぎていく。


ノエルはオリヴィアに万が一の事があってはと本気で心配だった。


だか、それ以上に怖い事があった。


オリヴィアの美貌に魅せられた男たちが、オリヴィアに群がってくる事だ。


他の男の目に触れさせたくない。


ノエルはレッドフォード家にくる前のオリヴィアを知らない。


オリヴィアも自分から深くは語ろうとしない。


それでも世間知らずで、男というものを分かっていない事は明らかだった。


男がどれほど怖い生き物なのか、オリヴィアはまだ知らない。



「ホプキンス伯爵夫人とのお茶会、僕も参加させてもらう」



クレアは額に手を当て、渋い顔をした。





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