† Lの呪縛 †
ジュリアンナの甲高い泣き叫ぶ声に眉を寄せるダグラス。



「はぁ……煩い女だ。ネヴィル、後は好きにしろ」



ダグラスは剣についた血をハンカチーフで拭い、鞘へ収めた。


いらなくなったハンカチーフを投げ捨てると、血で汚れたハンカチーフは転がったエリオットの顔を覆った。


ジュリアンナが泣き叫ぶ中、ダグラスは見向きもせずに部屋を後にした。


薄暗く静かな廊下を歩いているダグラスの顔には、少なからず疲れの色が見えた。


暗闇からスッと現れたワーグマン。


ダグラスは足を止め、ワーグマンと向き合った。



「事が済んだら部屋の掃除を頼む」

「畏まりました」

「あと、ネヴィルの動きで気になる点があれば報告しろ」



ワーグマンが頭を下げ、ダグラスは再び足を動かし始めた。


颯爽と歩いている様に、迷いも後悔も感じられない。


レッドフォード伯爵家の長男として生まれたダグラスは、幼い頃からありとあらゆる教育を受けて育った。


勉学だけではなく、体術、剣術、銃の使い方、人の殺し方まで……。


両親はダグラスには厳しく接した。


だがエリオットに対しては違った。


ダグラスが過酷な日々を過ごす中、エリオットは悠々自適な日々を過ごしていた。


子供の頃は自分の運命を呪った事もあったダグラスだが、今となっては多少なりとも感謝していた。





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