† Lの呪縛 †
ダグラスはオリヴィアの涙を拭い微笑んだ。



「あの日の事は私以外誰も知らない。 だから、もう忘れてしまいなさい」

「お父様……私……っ」

「ん? 何だい?」

「私の血は不老の効果があるって言ってた……」



オリヴィアの言葉を聞いて、ダグラスの頭の中にエリオットの記した検査記録が浮かんだ。


事件の次の日、エリオットの診療所の隅々まで調べた。


表向きは患者の資料や医学書ばかりを並べていたが、裏では違っていた。


人が死に至るまでの細かい記録に、臓器の詳細。


オリヴィアの血の事もしっかりと記されていた。


あまり多くの事は記されてはいなかったが、オリヴィアの血を飲んだジュリアンナが若さを取り戻したと記されていた。


その効果は驚く程のものだったと……。



「他には何か言われたかい?」

「……っ……」



オリヴィアは首を横に振った。


瞳を潤ませ、今にも壊れてしまいそうな程繊細なオリヴィアをダグラスは守りたかった。



「いつでも傍にいるよ。 だから何も心配する事はない」

「ほん、と……?」

「あぁ……今はゆっくり何も考えずに眠りなさい」

「眠るまで居てくれる……?」

「勿論だとも」



オリヴィアは頭を撫でてくれているダグラスの手に擦り寄る様に顔を寄せ、目を瞑り、暫くすると寝息を立て始めた。


ダグラスはオリヴィアのおでこに唇を落とし、静かに部屋を後にした。





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