† Lの呪縛 †
「お父様、お母様、今いいかな?」

「ノエルか……入りなさい」



手に灯りのついたランプを持ったノエルが、夫妻の部屋へ姿を表した。


すらっとした体に目鼻立ちのハッキリした整った顔、凛とした様は、若かりし頃のダグラスとそっくりだ。



「もう寝てた?」

「いや、お前がこんな時間にここへ来るのは珍しいな。 前回ここを訪れたのはお前がまだ五歳の頃だったか? また眠れないのか?」



ダグラスの言葉に場が和み、ノエルが苦笑いを浮かべた。


幼い頃のノエルは寂しがりやで、夜になると必ずといっていい程両親の寝室を訪れていた。


二人はそんなノエルに困っていたが、気付けばパタッと来なくなり、不思議に思いながらもホッと安心した。



「今は一人の方がグッスリ眠れるよ」

「ははっ、そうか」



ダグラスと和やかに話をしていたノエルが、その隣へ視線をずらした。



「お母様、昼間はすみませんでした。 オリヴィアの事が心配で、お母様の気持ちも考えずに酷い態度をとってしまった」

「いいのよ、そんな事。 私の方こそ何の相談もなしに決めてしまってごめんなさい」

「どうすればオリヴィアが笑って過ごせる様になるのか、僕もよく考えるよ。 遅い時間にごめん。 おやすみなさい」

「えぇ、おやすみなさい」





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