天使の歌

キュティは賑わう商店街を歩きながら、溜め息を ついた。

――信じる優しさと、疑う強さ。

セティの言葉の意味が、解らなかった。

辺境の、貧しい村で生きて来たキュティは、他者を疑う事を知らなかった。

貧しい村の村人達は、策略や謀略等 考えず、直感で行動する。

キュティは、誰かを疑った事も、誰かに疑われた事も、無かったのだ。

(ディリーさん、良い人だと思うんだけどなぁ……。)

私を守ってくれた、優しい人。

ディリーの笑顔を思い浮かべて、キュティは はたと足を止めた。

(……どうして、彼女は私を守ってくれるの?)

相手が可愛いから、好きだからと言う理由で、帝や政府が追っている者から初対面の人を守り続ける人なんて、居るのだろうか。

(……それに。)

キュティは、背筋が さぁっと冷えて行くのを感じた。

セティが暴走したのは、この町に来て直ぐだった。

そして、その日 以来、セティは吐血は するが、暴走は していない。

(暴走と、血を吐くのは、おんなじだと思ってたけど……。)

暴走し掛けているから吐血しているのだと思い込んでいたが。

ひょっとして、違うのだろうか。

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