天使の歌

(ディリーさんが、セティに何かを していて、セティの躰が おかしくなってるって事?)

ディリーは、味方じゃない。

そんな言葉が、ぽつりと頭に浮かんだ。

しかし直ぐに、キュティは首を横に振る。

(……止めよう。)

ディリーを疑う自分が、とても醜く思えて、キュティは頭から その推測を追い払った。

(違うよ。セティは きっと、暴走と旅の疲れで、体調を崩しただけ。)

彼の姿が、頭に浮かぶ。

キュティを安心させようと、頑張ってくれるセティの姿が。

彼は、笑顔を上手く作れない人だ。

今迄、哀しみの中でしか生きられなかったから。

それでも彼は、笑ってくれる。

(……悪い事しちゃったな……。)

悪魔の力に呑まれ、暴走したセティを、キュティは否定してしまった。

(独りに なった私と一緒に、旅を してくれたのに。)

まだ、暴走したセティの顔を思い出すと、怖いけど。

彼に謝ろうと、キュティは決めた。

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