天使の歌
「ディリーさん、只今。」
宿に帰り、借りた部屋のドアを開けると、ディリーはセティのベッドの横に座り込み、剣を研いでいた。
「お帰り。」
ディリーの笑顔に つられ、キュティも笑った。
そして、セティの様子を見ようと、ベッドに近付き、眉を顰めた。
「また、血を吐いたんですか?」
布団から覗くセティの服は、胸の辺りに、新たに赤黒い染みが出来ていた。
ディリーは黙って頷く。
剣を鞘に戻して、彼女は立ち上がった。
「……キュティ、1つ訊いて良いかい?」
「何ですか?」
キュティは、ディリーに向き直った。
「あんたさ、人間との混血(ハーフ)なの?」
その質問に、キュティは息を飲んだ。
「どうして……?」
この町に来てから、キュティは ずっとマントを着ている。
翼が片方しか無い事は、ディリーには知られていない筈だった。
ディリーは微かに微笑む。
「知らないの?噂に なってるよ。悪魔との混血(ハーフ)と、人間との混血(ハーフ)が、一緒に旅してるって。」
「そう、なんですか……。」
キュティは目を伏せる。
その姿が、彼女が混血(ハーフ)だと肯定している事は、確実だった。