天使の歌

「……セティ……?」

それは、今迄ベッドで寝ていた筈の、セティだった。

高熱に浮かされ、汗が顎を伝う。

それでも彼は、強い瞳で、リエティーを睨んだ。

しかし、その足は僅かに震えている。

立っているだけで、やっとなのだ。

「……キュティに、触れるな……。」

掠れたセティの声。

リエティーは不敵に笑う。

セティはリエティーに飛び掛かると、右腕を彼女の頭に伸ばした。

しかし その手首を、リエティーは掴んだ。

「……くっ……。」

セティは歯を喰い縛る。

リエティーは彼の空いている左手を見た。

「そっちは、何も出来ないのかしら?」

「……う、るせェ……っ。」

いつの間にか、セティは肩で荒く息を していた。

今の攻撃が、吐血し、弱った躰の、精一杯だったのだ。

「貴方、右腕で邪力を操って戦うんですってね。左腕で神力を操る事は出来ないのかしら?」

「……っ……。」

手首を掴まれたまま、セティの頭は だらんと垂れた。

ぜぇぜぇと苦しそうな呼吸に、キュティは彼の元へ走り寄ろうとした。

「ねぇ、やっちゃって良い?」

「程々にね。スティ様が待ってるんだから。」

リエティーの問いに、ディリーは 素っ気なく答える。

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