天使の歌
そして、樹のマントを羽織ったセティは、辺りを ゆっくりと見渡した。
焦土と化した処刑場と、沢山の焼死体を。
「……俺が、やったんだな……。」
溜め息のようなセティの声。
彼を見ると、自分の犯した罪に真っ直ぐに向き合おうと、強い光を宿した、揺れる瞳が見えた。
「あの人は、悪魔のセティなんでしょう?」
訊くと、セティは首を横に振った。
「違う。確かに、悪魔の部分が強く出ていただろうけど、あいつも俺だ。俺が恐慌しなければ、あいつが こんな事を する必要も無かった。……あいつが した事も、あいつを止められなかったのも、俺の責任だ。」
ずっと暗い世界の中で、目を閉じ耳を塞いでいたから、もう1人の自分が どう言う想いで これを やったのかは解らない。
けれど、自分を護ろうとしてくれた もう1人の自分を、受け入れようとセティは思った。
「……こいつは どうするんだ?」
樹が、気を失っているスティを指差す。
彼を殺した方が、この先 生きて行くのは楽だろう。
しかし、セティは首を横に振った。
「……そのままに したい。血の繋がった兄を、俺は殺せない。」
セティの言葉に、皆は頷き。
彼等は、都を後に した。