紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
父は、続ける。
『そうしたら、お前も力が使えるようになる。
な、ええやろ?
そしたら皆と一緒や』
『……でも、なんで精霊やなくて悪魔なん?
お父ちゃん、白まほーしってやつなんやろ?』
『アホ、当然精霊にも力を借りようとしたわ。
けどお前はなぜか、白魔法があわんみたいで、どの精霊もお前には力を貸してくれんのや。
だから、悪魔で我慢せえ』
『んなアホな!』
そりゃ、お父ちゃんや兄ちゃんや、仲間のお兄ちゃんたちと一緒は嬉しい。
精霊がどんな可愛いものかも、見てみたい。
けど、僕は力なんかなくても、別段不自由してへんよ?
目も見えるし、口もきける。
別に悪魔に頼ってまで、特別になりたいとは思わんよ?
僕は電車の運転手さんになりたいねん。
そう思ってるのに。
オーランドは、それをちゃんと言えなかった。
多分。
父に逆らったら、もっとひどいことになると、どこかで、怖がっていたんだろう。
自分はこのままだと、いつか、捨てられるかもしれないと。
のんびり暮らしながら、幼いオーランドは、心のどこかでそれに怯えていた。