紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
オーランドの無言を、父は承諾ととらえた。
悪魔を召還するのに、精霊の力は借りられない。
父はポケットから取り出したチョークで、足元に魔法陣をすらすら書く。
それが完成すると、父の太い腕が、オーランドの右腕をつかんで、その中に引き入れた。
そして、当時のオーランドはわからなかった古代の言葉で、呪文を唱える。
周りの空気が一変し、黒く禍々しいものに変わった。
途端にオーランドは、それが恐ろしくなった。
『あかん、やぱりあかん。
怖いよ、お父ちゃん』
『大丈夫や。任せとき。
上等な悪魔と、契約させたるから』
『──っアホか、そんなんいらんわ……っ』
最後の言葉は、音にならなかった。
父の覚えたての黒魔法は成功し、いつの間にか悪魔がしっかり召喚されていたから。
自分の肩越しに、息子の視線が固まったのを見て、父は笑った。
いやいや、何笑てんねん。
背後に、悪魔がいるんやで?
オーランドは胸の中で、声にならないツッコミを入れた。