紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「あのねぇ、私を無視して話を進めないでくれる?

プリンセスもキメラのあなたも、逃がすわけないじゃない」


ナンシーの呆れた声が届き、オーランドはコートニーを少し離す。


「コートニーを連れて行きたければ、僕を先に捕獲してみ!」


「ちょ、オーランド……!」


「へぇ……まだ子供だと思っていたのに、そんなナイスガイを捕まえちゃうとはね。

さすが、我らがプリンセス」


「ナンシー!違うから!」


コートニーの頬が少し赤く染まったのを無視し、ナンシーは自分の目の前に黒い魔法陣を呼び出した。


よく見れば、彼女のピアスがゆらゆらと揺れている。
それは小さなヘビの姿の悪魔だった。


「プリンセスのキメラ化を失敗することは、許されない。

貴重な王族の血だもの……拒絶反応で死んでしまったりしたら大変。

だから私は、大量の試作品を作った」


黒い魔法陣から、死者が姿を現しはじめる。


オーランドは右手に黄金のオーラをまとい、その前に走った。


あの悪魔のピアスさえ壊せば、ナンシーは魔法を使えないはず。


オーランドは死者を殴り倒し、草を踏みつけ、天に舞い上がる。


「オーランド!」


コートニーの声が届く前にナンシーの背後に着地した彼は、振り向きざま、その細い腰に回し蹴りを食らわせようとしたが……


「ムダよ」


ナンシーはしっかりとオーランドの動きをとらえていた。


まるで盾のように、魔法陣をオーランドの目の前に突きつける。


「ち……っ!」


それに体を突っ込めば、また飲み込まれてしまう。


オーランドは慌てて飛び退いた。


そのすきに、ナンシーは死者を呼び寄せる。



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