紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「死者と悪魔のキメラか……」


オーランドは右手に力を集約する。


その金のオーラの勢いで、彼のまばゆい金髪が揺れた。


「悪趣味なもん作りよって!

倒れろ、ババア!」


天に掲げた右腕が振り下ろされる。


放たれた金色のオーラは巨大な手の形にのび、草と大地を削りながら、ナンシーへと向かう。


しかし……


『ママ!』


「……!?」


オーランドの耳に、小さな子供の声が聞こえた。


それは死者の口から発せられたように思えたが……


確認をする前に、彼らはナンシーを守り、オーランドの力に撃たれてしまった。


『ママ……』


おぞましい、死霊の鳴き声。


その中に確かに感じる、純粋な魂。


死者たちはばたりと、その場に倒れた。


もちろんそれだけでは、完全に葬ったことにはならないが。


「まさか……」


オーランドの脳裏に、血を抜かれて倒れた子供の遺体が蘇る。


「……子供は可愛いわね。

どんな親でも、慕って、守ろうとしてくれる。

母である私の言うことは、絶対なの……」


「……っ……!!」


喉の奥で、ヒュッと嫌な音がなった。


それはもちろん、ナンシーに対する恐怖と嫌悪で……


「あんた……子供たちの血まで使って、この死者を作ったんか……」


「大人の血は、汚れているもの。

もっとも、子供も今の時代、空気や食べ物が悪いから、すごく綺麗とは言えないけど」


「そんなことを……言っとるんやない!」


死者と、悪魔と掛け合わされるために生まれた子供がどこにいる?


そんな子供、どこにもいない。


ただ僕らは、愛されたくて生まれてきたのに。


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