紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「くっそ……ババアがぁぁっ!!」


オーランドは再び力を溜め、ナンシーの顔にこぶしをめり込ませようと、走る。


その速さは先ほどとは桁違いで、ナンシーは死者を呼ぶ呪文を唱える暇もなく、守りに徹した。


「倒れろやぁぁぁっ!!」


何発も送り込まれるオーランドのこぶしは、鋼のごとく強化されたナンシーの魔法陣に阻まれ、がん、ごん、と鈍い音を立てた。


「誰が……ババアですってぇ!?」


魔法陣の陰から、鬼のような顔をしたナンシーが怒鳴る。


ブゥンと彼女の魔法陣が鳴り、至近距離にいたオーランドに、怒りの大砲をぶちこんだ。


「オーランド!!」


コートニーの悲鳴と、爆音が響く。


彼女はシドがいないため、魔法が使えない。


見守るしかなかったコートニーの前で、ナンシーの闇の力に、まばゆい金髪が飲み込まれた。


「……いやぁっ!」


思わず顔を覆ったコートニー。


その指の間から、光が差し込んだ。


おそるおそる、その手を下ろす。


そこでは、闇の大砲を切り裂き、押し返そうとする金色の竜巻が渦巻いていた。


「オーランド……!」


ナンシーの強力な黒魔法を、黄金の渦が切り裂いていく。


このまま勝てるかもしれない。


コートニーは期待を込め、オーランドを見つめるけど……


「……あ、ぐ……っ!」


突然、ナンシーの魔力を圧していたオーランドの表情が、苦痛に歪む。


そして、黄金のオーラは消え去ってしまった。


「ああっ!」


オーランドは右腕を抑えてうずくまる。


(こんな時に……!)


彼の右腕が、昨日のように突然痛み出したのだ。


そのすきを、ナンシーが見逃すわけはない。


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