紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「少し眠ってちょうだい」
ナンシーの魔法陣が、闇を吐きだす。
オーランドはその波に飲まれ、空に放り投げられ、コートニーの足元に倒れた。
「オーランド!」
膝をつくコートニーの前には、ボロボロになったオーランド。
彼は右腕を押さえたまま、苦痛を必死にかみ殺していた。
「さぁプリンセス、彼も共に参りましょう。
プリンスがお待ちかねです」
ナンシーが二人の方へ近づく。
(プリンス……?)
遠くなっていく意識の中、オーランドは考える。
プリンセスはコートニー。
では、プリンスとは?
王族の末裔が、コートニーの他にもいると言うのだろうか。
「ナンシー、お願い。
私は帰る。この人はここに置いていって」
「承伏しかねます、プリンセス。
その者は、私たちの研究の役に立ちますから」
「……いい加減にしてよ……!」
倒れたオーランドを抱きしめるコートニー。
その腕に、力が入る。
「そうやって、自分たちのために誰かを利用して傷つけてばかりいるから、黒魔法師は嫌われるのよ!」
「……それは白魔法師も同じこと。
私たちはやられたことをやり返すだけ」
ナンシーの声が、低くなったような気がする。
かまわずコートニーは怒鳴り続けた。
「たしかに、白魔法師が私たちにしてきたことは許せない。
私だって、彼らなんか大嫌いよ。
だけどやり返して何になるの?
恨んで、恨み返して、それで誰が幸せになれるのよ!?」