紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「カート様、私も一緒に……」
「急がなくていいよ。
ちゃんと次の悪魔を召喚してからついてきたら?」
「でも……」
まだ何か言おうとするナンシーは、口を閉じた。
目の前では、カートが悪魔の顔でほほ笑んでいた。
目が合った者の心臓を凍らせるほど、冷たく。
「……わからないかな?
今度足手まといになったら承知しないと言っているんだよ?」
「は……い、申し訳ありません、カート様」
「うん。まあ僕も、昼間はあまり調子が出ないんだけど、しょうがないね」
カートはにこりと笑い、黒豹を引き連れて、部屋を出る。
「まさか、こんな展開になるとは思わなかったよ。
プリンセスが白魔法師に絶望して、僕のところに帰ってくるのをのんびり待とうかとも思っていたのにな」
彼は黒豹に話しかける。
無口な悪魔は、返事をしない。
「君は隠れていなよ。
ロンドンで黒豹がのしのし歩いていたら、みんながびっくりするからね」
カートは床に魔法陣を描く。
黒豹は無表情で、主人に従って姿を透明にし、魔法陣の中へ。
彼らはすぐに、その中心に吸い込まれていった。