紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「じゃあ、少し待ってくれ」
そう言われ、コートニーはほっと息をついた。
オーランドの知り合いという男の住処は、ロンドンの街中にある、何の変哲もないパブだった。
彼は営業時間外にも関わらず、オーランドを歓迎し、早速偽造パスポートの制作に取り掛かっている。
デジカメで写真を撮られ、紅茶をすすめられたコートニーは、素直にそれに口をつけた。
「ところで彼女は、お前さんのなんなんだい?」
中年の、灰茶色の髪をした男はオーランドに聞く。
その手元にはノートパソコンがあり、忙しそうにキーをたたいていた。
「彼女ですわ」
オーランドは笑って答える。
コートニーは思わず紅茶を吹きそうになってしまった。
「へえ、珍しいじゃないか。
女友達はたくさんいたけど、『彼女』と認めた人にあったのは、初めてだ」
いったい何人女友達がいるのよ。
それって本当に友達なの?
コートニーは少しの嫉妬を覚えるが、オーランドの言葉でそれは吹き飛んでしまった。
「そうですよ、初めての『彼女』ですもん」
「初めて本気でほれたってわけだ。
たしかに、今までの友達のなかで、一番可愛いな」
男は笑って、パソコンに向かって作業を続けた。
「……何人もこのパブに連れてきたのね」
「ちゃうちゃう。ここでぼーっとしてると、自然にお友達が増えるんやって」
一人でいるオーランドに、女の子たちが声をかけるというわけか。
自分がモテることは認めて謙遜しないけど、なんだか嫌味。