紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「ええ、でもこいつ、どうしてもイタリア旅行に行きたい言うから。
ええとこのお嬢さんをもらうのって、苦労しますわ」
こいつって……もらうって……なんだか、婚約者みたい。
コートニーはむずがゆいような感覚を知った。
「本当だなあ。くれぐれも足がつかないように、気をつけてくれよ」
「何かあっても、マスターには迷惑かけません」
オーランドは何十枚もの紙幣を、カウンターに置く。
それは、コートニーが一度も見たことのないような金額だった。
やがて出来上がった偽造パスポートを持ち、彼らはパブをあとにした。
「ねえ、大丈夫なの?」
「なにが?」
「お金。逃亡資金、なくなっちゃったんじゃ……」
心配するコートニーに、オーランドはにやりと笑った。
そして、ポケットの中から何かを取り出す。
それは、オーランドが大事にしてきた、ブランド物のアクセサリー類だった。
「いつの間にポケットに入れてたの!?」
「キミが着替えてる間。これを売れば、日本までの片道のチケット代はなんとかかせげる」
「そんな……いいの?大事なものなんでしょう?」