紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
ぎゅっ。
オーランドはコートニーの手をにぎる。
「今からは、何を犠牲にしてでも、キミを守る。
キミが……好きやから」
ロンドンの雑踏の中、コートニーの耳にはその言葉だけが残った。
通行人は誰も彼らに目を留めず、せわしく行きかっている。
「重いわ」
コートニーはそれだけ言った。
目頭が熱かった。
「あなたが無理して笑うたび、私は泣きたくなるの」
「無理なんかしてへんよ」
「してるわよ」
「こういう顔なんやって。
それにな、僕は今わりと幸せやで?」
どうして?
尋ねる代わりに、首をかしげる。
「だって、好きな子が、僕を心から心配してくれてるんやもん」
オーランドはしまりのない顔で、にへらと笑った。
「……バカね」
涙が一粒こぼれた。
急ごうと、オーランドが自分の手をひいて、雑踏の中へ紛れ込む。
ロンドンは、こんなにたくさんの人がいるのに。
たくさんのお友達に囲まれて、いつも笑っているのに。
あなたも、苦しんでいたのね。
決して、私だけが悲しいんじゃない。
自分を殺して社会になんとか溶け込んでる人が、この中に何人いるだろう?
コートニーはオーランドの手を強く握り返した。
あなたを好きな私は、ここにいる。
言葉には出せないけどせめて、あなたの手があたたまりますように、と。