紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


空港に向かう途中、せっかくだからとオーランドがロンドン名物の2階建バスにコートニーを乗せて、アクセサリー類を売りにいった。


それらはまたコートニーの見たこともないような紙幣へと変わり、二人の逃亡資金となった。


「どこへ逃げるの?」


「日本やな。しばらくかくまってもらお」


「陰陽師のお友達に?」


「せや」


道中、オーランドは日本にいた時のことをコートニーに話していた。


「ふうん、可愛い可愛いまりあちゃんに会えるわけね。楽しみ」


「あんなあ、これから仲良くしていかなあかんのやから、喧嘩売らんとってくださいよ、お嬢様」


つんとしたコートニーに、呆れ顔のオーランド。


二人は顔を見合わせた瞬間、笑いあった。


……しかし、そんな穏やかな時間はいつまでも続かなかった。


もうすぐで空港に到着するというとき。


「ああ……来てもうたか。早かったな……」


オーランドが、残念そうにいった。


まるで、まだ公園で遊びたい子供が、迎えにきた母親を見つけてしまったように。


空港の周辺は、当然のごとく民家も商業施設もない。


そこで待ち伏せされるのは、心のどこかで覚悟していた。


「お前が追手か、クライド……それにフェイ」


彼らの前に現れたのは、つい先日までオーランドの仲間だった男二人だった。


コートニーは、オーランドの陰に隠れる。





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